あいまいもこ

厄年に怯えるアラサーが、曖昧模糊とした気持ちと本の感想を綴るブログ。

痴人の愛/谷崎潤一郎

痴人の愛/谷崎潤一郎

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こんばんは、そらまめf:id:tekuteku_michikusa:20170331142439j:plainです。

 

不倫ブームと言っていいくらい、毎日のようにテレビをつければ不倫の話ですね。

 

 

私は「昼顔」のような“出会う順番が違ったら”“不倫という名の純愛”系よりも

「あなたのことはそれほど」のような“不倫をちょっと滑稽”に描いている作品の方が好きです。

 

(単純に好みの問題で、不倫=滑稽とは思っていません。)

 

 

谷崎潤一郎さんの「痴人の愛」に出てくるナオミはぶっ飛んでいて、不倫しまくり。

それでいて魅力的で、振り回される主人公が幸せだと思えるほど。

 

私は、清々しい程ぶっ飛んだナオミが好きです。

絶対友達になれないけど。

 

 

簡単なあらすじ

 

 生真面目なサラリーマンの河合譲治は、行きつけのカフェで働く美少女ナオミに惹かれる。譲治は、まだ幼さの残るナオミを自分の理想の女性に育てあげ、もし理想の女性になったら結婚しようと考える。洋館を借りて二人暮らしを始めた譲治とナオミ。

やがてナオミは知性は欠けるものの、女として魅力的に成長し、二人は自然な流れで結ばれ結婚する。

成熟するにつれて妖艶さを増すナオミの周りには、いつしか男友達が群がり、ナオミの浪費も酷くなる一方。

魅惑的なナオミの肉体に翻弄される譲治は、次第に身を滅ぼしていく…。

 

ファム・ファタル

 

:Femme fatale)は、男にとっての「運命の女」(運命的な恋愛の相手、もしくは赤い糸で結ばれた相手)の意味。また、男を破滅させる魔性の女(悪女)のこと。 wikipedia内『ファム・ファタル』より引用) 

 

 ナオミはまさに譲治にとってのファム・ファタルです。

 

譲治と一緒に住む前、カフェで働いていたナオミはどちらかと言うと地味で無口でした。

顔色なども少し青みを帯びていて、譬えばばこう、無色透明な板ガラスを何枚も重ねたような、深く沈んだ色合をしていて、健康そうではありませんでした。(p.7)

 

そんなナオミを譲治は、最初は上から目線で「女中の役もしてくれ、小鳥の代わりになってくれよう」と単調な暮らしに多少の変化を与える為に、一緒に住むことにします。

ナオミを引き取って世話をしてやり、望みがありそうなら妻にしてやっても構わない…

すごい発想ですね。

 

男性ならば多少共感できるのでしょうか…。

 

しかし勉強は全然ダメでも、理想通りに、いやそれ以上に美しさを増していくナオミに 譲治は自分でもどうすることもできない程溺れていきます。

 

浮気されても、浪費家でも、勉強ができなくても、家事をしなくても、ナオミが「美しい」からオッケー…と最終的には許してしまいます。

可愛いは正義だよ!!

 

結末は、譲治がナオミの「美」の前にひれ伏して、完全にナオミに屈服するところで終わります。

 

その後が気になる

 

ナオミは今年二十三で私は三十六になります。 (p.317)

 という結びの文で終わります。

 

譲治は振り回されながらも、それが完全に自分の「フェチ」だから、情けないけど幸せそう。

 

でもナオミはどうなるのでしょうか。

 

まだ数えで十五歳で、譲治に引き取られ、贅沢三昧で甘やかされて育ったナオミ。

自分が美しく、そのことをよく理解して武器にしているナオミ。

でも必ず“若さ”という資産は減価償却されます。

 

 ナオミが老いてしまっても、譲治が愛し続けてくれるとは思えません。

 

その後の二人を思うと、この小説が喜劇なのか悲劇なのか、ますますわからなくなります。